貸金業法改正運動C “勝利への軌跡”〜クレサラ対協30周年記念誌 

シンポ・集会 〜“勝利への軌跡”

(1)概括
金利引き下げを求める運動の一環として開催されたシンポジウムや集会はあまりに多く、そのすべてを振り返ることは困難を極める。全国規模から地域単位まで、ほぼ毎週末に全国どこかで金利引き下げ運動が開催され、そのすべてが、参加者の熱気と法改正実現への使命感に溢れていた。前進と後退の繰り返し。政府や金融庁からの報告に一喜一憂しながらも、私たちの獲得目標である「グレーソーンの廃止」と「出資法金利の利息制限法水準までの引き下げ」は、決してぶれることなく、終始一貫していた。それを支えていたのは、全国津々浦々で開催された集会参加者のエネルギーにほかならない。
集会での定番となったシュプレヒコールは、そこに会した一同の魂の叫びであった。その声は、デモ行進を通じて一般市民にも届き、マスコミの注視を呼び、貸金業者からの攻勢にぶらつく政治家に覚悟を迫ったのである。
さらに、この運動の大きな特徴は、クレサラ対協・学者・弁護士会・司法書士会・労働団体・消費者団体等、幅広い層の組織・個人の連携によって担われたことにある。かつての消費者運動に例をみなかったこの成果は、今後の新たな闘いに向けた大きな財産となることに間違いない。

(2)05・2・26集会「今こそ高金利社会を打破しよう!」 〜全電通ホール
対商工ファンド最高裁判決1周年記念集会として、弁護士・司法書士・被害者の会等、250人を超える参加者を迎え、2・26集会実行委員会によって主催された。
04・2・20最判(対SFCG)を「司法によるみなし弁済規定厳格解釈の宣言」と訴える呉東正彦弁護士、独自の調査を基づき、サラ金の影に隠れつつ着々と進行する“銀行のサラ金化”問題を鋭く指摘する須田慎一郎氏(経済ジャーナリスト)、金利規制撤廃後の韓国における悲惨極まりない多重債務者の状況を、映像を交えながら紹介する横田一氏(ジャーナリスト)、企業会計という視点から、利息制限法金利でも経営破綻は免れないことを論理的に検証する柴田昌彦税理士らと共に、筆者も金利自由化論を説く坂野論文(早大)を批判した日司連意見書を紹介した。
法改正を2年後に控え、金利引き下げ運動の事実上の口火を切る集会でもあり、公明・民主・共産・社民各党の代表者からも、金利引き下げ問題に取り組む決意表明が力強く行われた。長い闘いの始まりである。

(3)全青司/05・7・2「金利引き下げ集会」 〜愛知県司法書士会館
司法書士界の先陣を切り、全青司が愛知かきつばたの会の協力を得て開催した本集会の目玉は、映画「草の乱」の上映である。高利に苦しみ、武装蜂起という手段でしか抗うことができなかった秩父の民衆ら。一方で私たちは、民主主義・法律・世論という彼らが持ち得なかった武器を手に、しかも彼らの熱い思いを受け継ぎ、彼らがなし得なかった成果を目指すことのできる環境にいる。映画を通じ、参加者一同に「必ずや金利引き下げ実現を!」との誓いが共有できた。
ほかにも、日弁連による韓国視察(平井宏和弁護士)並びに韓国のサラ金事情(横田氏)の両報告を聞き、金利自由化論が机上の空論に過ぎず、かえって社会を混乱の渦に巻き込む改悪であることが、改めて強く認識できた。

(4)日弁連/05・11・19「サラ金・クレジットの高金利を考える〜多重債務社会を克服しよう」 〜クレオ
日弁連及び東弁・一弁・二弁・横浜・埼玉・千葉の6単位会が共催した本集会ではまず、日弁連によるアンケート結果を踏まえた基調講演が行われた(日弁連消費者委員会)。多重債務者1508人に対するアンケート結果は、高金利の波紋が、自殺・離婚・家庭内暴力・税金や学費滞納等、本人の問題を超えて家族や社会に広く影響している事実を物語った。
大山小夜金城学院大学助教授、白井康彦中日新聞社記者、高橋加代子長野消費生活センター所長、宇都宮健児弁護士、筆者で進められた後半のパネル(コーディネーター・辻泰弘弁護士)では、近い将来破綻を招く蓋然性の高い資金需要者は、むしろ積極的に消費者信用市場から排除される仕組みが構築されるべきであり、彼らに対する生活保障は、セーフティネットとしての社会福祉や社会保障の拡充によって対応すべきであることが確認された。
パネルでの議論は、法改正後の現在でも、多重債務者対策本部における重要ポイントのひとつに位置付けられている。意義ある提言が示されたパネルであった。

(5)静岡青司協/05・12・4「市民集会 出資法の上限金利見直しに関するタウンミーティング 〜静岡県司法書士会館
地域での活動もひとつ。“地方から霞ヶ関へ”をキーワードに、前沢侑静岡県議会議員(自民)、前林孝一郎静岡県議会議員(公明)、田村謙治衆議院議員(民主)、平賀高成元衆議院議員(共産)の4名を招き、@金利規制撤廃論・金利自由化論について、Aグレーゾーンの問題について、B出資法の上限金利とヤミ金融の跋扈との関係について、C金利引き下げによる中小貸金業者の倒産について、D地方議会における出資法上限金利引き下げを求める意見書の採択について、の5テーマにつき、党あるいは政治家個人の見解をパネル形式で述べてもらう集会であった。
その後に予定していた請願活動を見据え、地方議員や各党県連にも問題意識を根付かせる絶好の機会であった。

(6)日司連/06・1・21「金利シンポ〜高金利がもたらす人権侵害」 〜大阪司法書士会館
日弁連シンポでは、高金利が家族や社会へ与える波紋が明らかにされた。日司連シンポでは、これらを“高金利がもたらす人権侵害”と位置付け、@ホームレス問題(後閑一博司法書士)、A犯罪加害者(柴崎崇弁護士)、B児童虐待・DV(佐藤順子仏教大学講師)、Cギャンブル依存(赤木健利医師)、D公租公課の滞納(小原雄一長野県生活文化課)、と各分野の最前線で活躍される報告者からリレー報告を受けた。“現場”が垣間見えるような生の声を通じ、金利引き下げの必要性をリアルに体感できた。
後半のパネル(コーディネーター・宮内豊文司法書士)では、基調講演も頂いた大山助教授、伊澤正之弁護士、渡辺哲也熊本日日新聞社記者、中巳出崇司法書士、筆者により、ついに1年後にせまった法改正を見据え、様々な立場からの効果的な運動論が議論され、金利引き下げ運動は、いよいよ熱を帯びてきたものである。

(7)06・3・4「高金利引き下げをめざす全国集会〜多重債務社会を打ち破ろう!〜」 〜灘尾ホール
「決戦の年」を迎え、500名を収用可能な灘尾ホールは満席の盛況ぶりであった。高金利引き下げ全国連絡会が主催する本集会には、前年末に結成されたクレ・サラの金利問題を考える全国連絡会議及び中央労福協が共催、全国消団連が後援と、運動の輪が労働団体や消費者団体にも確実に広がっていることを示した。
佐高信氏(ジャーナリスト)の記念講演「金利規制の緩和は日本にどのような社会をもたらすか」、茆原洋子弁護士(最高裁判決の意義)、小澤吉徳司法書士(地方議会の決議達成状況)、田中祥晃被連協副会長(100万人署名の達成状況)の各報告等に次ぎ、16時過ぎより約1時間半にわたり、まだ寒空の都内を、「29.2%は高すぎるぞ!」「サラ金は金利を下げろ!」とシュプレヒコールを上げながらのデモ行進が敢行された。
問題認識と理論武装が中心であったこれまでの集会から、“社会運動”に転換した集会であったと言えよう。

(8)06・9・16「特例と先送りを許すな!!金利引き下げ全国集会」 〜情報文化センターホール
「少額特例金利」「事業者特例金利」「利息制限法の金額刻みの引き上げ」・・・後藤田正純金融担当政務官を抗議の辞任に追いやった9・5金融庁案(対自民党)は、懇談会の議論に反したあまりに唐突な提案であった。神奈川クレサラ対協と高金利引き下げ神奈川県民会議が主催した緊急抗議集会には、立ち見を含む250名が参集し、「特例金利」「利息制限法の改悪」の断固反対を宣言した。
新里宏二弁護士の「闘いはこれからだ!」は今でも頭に響いている。

(9)06・10・17「「特例高金利」と「利息制限法改悪」の阻止を求める1000人パレード」 〜日比谷公園野外音楽堂
すべての運動は、この日この場所に結集した。目論んだ倍の人数、2000人を集めた総決起集会と国会請願パレードは、05・2・26集会から始まった1年半の闘いが、“国民運動”へと昇華した瞬間であった。
パレードから1週間後の10・25、与党両党は「特例」も「刻み」も撤回し、各専門部会において改正法案を承認。衆議院に次いで参議院でも同法案が可決された12・13、ひとつの闘いは幕を閉じた。

お伝えできない多くの集会関係者に対する失礼をお詫びし、勝利への軌跡とする。

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