債権回収@ 取立に回した手形が不渡りに! 〜 もうタダの紙くずなの?

Q. 取り立てに回した手形が不渡りになって返還されてきました。
手形金は誰からも回収できないのでしょうか

 手形の不渡りによって、銀行を介した交換制度による決済はできなくなりますが、手形を振り出した会社の責任だけでなく、裏書人として手形の裏面に記名押印した者の責任も消滅するものではありません(注. 流通する手形の多くは振出日欄や受取人欄に何も記載されていませんが、これらを補充しないまま手形を取り立てに回した場合、裏書人に対する請求の前提要件を欠いてしまい、本来可能なはずの裏書人に対する請求ができなくなることになってしまいます。よって手形を取り立てまわす際には、必ず手形面に空白の個所がないかをチェックするようにしましょう)。
会社を経営する方ならよくお分かりでしょうが、6ヶ月以内に2度不渡りを出した場合には銀行取引停止処分という制裁を受けることになります。企業にとってメインバンクの撤退は危機的状況を意味するため、銀行取引停止処分は事実上の倒産ともいわれています。したがってたとえ1回でも不渡りを出すということは、手形を振り出した会社が事業継続を半ば断念するという意思の現れと考えられ、振出会社の資金繰りはにっちもさっちもいかない状況にあるということが推測されます。あなた以外にも不渡手形をつかまされた人がいるでしょうし、振出会社は高利の貸金業者から多額の借り入れを起こしていることも十分に考えられます。手形をお持ちのあなたとしても、手形金額に比例してご自分の事業の資金繰りに大きな影響が出ることが明らかです。
このように取り立てに回した手形が不渡りになった場合、多くの債権者が一斉に債権回収のために動き始めるため、あなたの場合もその後の処置は緊急を要することになります。直ちにお近くの司法書士等法律専門家に相談し、回収のための法的手段を取ることをお勧めします。

回収のための法的手段は、多くの場合

  1. 仮差押の申立  
  2. 手形訴訟の提起
  3. 強制執行の申立  の手順でなされます。

仮差押の申立
切羽詰った振出会社や不渡りの事実を知った裏書人は、会社財産を社長個人や別会社等に名義変更するといういわゆる財産隠しを行うケースがよくあります。仮にあなたが裁判に訴えて勝訴判決を得たとしても、回収に充てようと目論んでいた財産が名義変更されている場合すぐには強制執行ができません。また今現在価値のある財産でも、勝訴判決を取った頃にはあなた以外の債権者のため担保に差し入れられているということも考えられます。そこで財産を勝手に売ったり担保に入れたりしないよう凍結させる手段として、まず仮差押の申立を裁判所に行います。
仮差押の申立にあたっては、

  1. 仮差押する財産の特定
  2. 保証金の用意     の2つが必要です。

 何を押さえるかは、財産的価値、他の債権者による担保設定の有無、いかに早く換金して回収できるか等状況によって変わりますが、預金や売掛金を押さえるには実際に取引している銀行や、商品を納入している取引先を特定しなければなりません。よってあなたが相談にいかれる際には、振出会社や裏書人に関するできる限りの資料をご持参いただく必要があります。
また保証金の額は通常手形額面の約10%程度です。仮差押を裁判所に認めてもらうためには、あらかじめこの金額を法務局に供託しなければなりませんのでこちらの用意も並行して行わなければなりません。 

手形訴訟の提起
仮差押で財産を凍結させたならば、この財産に対し強制執行できるようにするため裁判を起こして勝訴判決を取らなければなりません。一般的に裁判は時間とお金がかかるといわれていますが、あなたのように手形金の支払請求をする場合には手形訴訟という簡易・迅速な裁判手続が利用できます。
手形訴訟は1回の審理で終結することがほとんどで、多くの場合訴えたあなたが勝訴しますし、手形訴訟の判決には必ず仮執行宣言というものがつくため、先に仮差押しておいた財産に対し直ちに強制執行ができるようになります。
手形訴訟を提起するためには不渡りになった手形の両面のコピーを訴状に添えて提出しますので、相談する事務所には必ず不渡手形の現物をご持参ください。

強制執行の申立
勝訴判決が取れたとしても、振出会社や裏書人が任意にあなたの下へ手形金を支払ってくれないことも多いでしょう。そこで仮差押によって、凍結させておいた財産に対し改めて強制執行の申立をすることで、めでたく回収が図れるわけです。

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