破産事例C 家の名義を妻に変えれば、破産をしても大丈夫? 

 多額の借金が払えないので破産申立を考えていますが、住宅を取られないように妻の名前に変えたいと思います。問題ないでしょうか?

1 結論
問題のある行為であり、名義変更をするべきではありません。
また、仮に名義変更をしたとしても、その後の破産手続において裁判所より選任された破産管財人により、名義変更そのものの効力が否定され、住宅は売却されることになるのが通常です。
2 債務整理の基本原則
破産手続を含めた債務整理全般の基本的な考え方は、下記のとおりです。
@ 所有する資産は、一部の生活必需品を除き、すべて換金して返済に充てる
A @の返済は、すべての債権者に平等に行う(按分配当)
B それでも残った借金について、「分割弁済」あるいは「返済免除」により解決する
破産申立を検討しながら、一方で、債権者への返済原資として売却・換金・配当しなければならない住宅を、他人(家族を含め)名義に変更するということは、債権者の「返済を受けられる権利」を不当に侵害するものであり、許されません。
3 「財産隠し」の危険性
(1)犯罪に該当
このような行為は「財産隠し」と評価され、破産法の規定する「詐欺破産罪」という犯罪に該当するおそれもあります。
(2)借金も残る
また、「財産隠し」と評価される事実が判明した場合、借金の法的免除が認められないおそれもあり(免責不許可)、破産申立をしたとしても、借金は支払わなければならないという不利益を受けてしまいます。
(3)名義変更は否認
さらに、このようなケースでは、破産手続において裁判所が「破産管財人」を選任するのが通常です。破産管財人は近隣の弁護士の中から選任される法律のプロですから、債務整理の基本原則に反する「財産隠し」を許しません。
破産申立に先だって行われた住宅の名義変更は、破産管財人による「否認」という手続きにより失効し、結局、名義変更のなかった状態に戻されてしまうのです。
4 どうすればいいのか?
住宅を手放さずに債務整理をしたいというご希望であれば、個人民事再生手続の検討が考えられます。一定の収入が継続的に見込まれることが必要ですが、条件に合致すれば、住宅を確保しつつ月々の返済額を無理のない金額に減額することも可能だからです。
個人民事再生の条件に合致しない場合は、住宅を確保するのは困難です。親族等に資金援助者がいる等の場合には、適正な金額で住宅を買い取ってもらう方法も考えられますが、この場合も、売却代金が適正か否か、売却金から必要不可欠な経費を控除した全額が債権者へ返済されているか否か等、「財産隠し」との評価を受けないための慎重な対応が求められます。
ご自分で判断せず、債務整理に精通した司法書士にご相談の上、手続を選択することをお勧めします。

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