特定商取引法・割賦販売法改正のポイント

平成20年改正のポイント整理

 本論に入る前に、多岐にわたる平成20年改正の内、主な改正内容とそのポイントについて、特定商取引法と割賦販売法との概略を整理したい。以下では、それぞれの改正点と関連する重要論点とを箇条書きによって掲げた。なお、詳細な解説や適用条文の引用は各章ごとの論述に譲るが、各改正論点には、本書において該当する章番号も付しているので、参照されたい。

1 特定商取引法の改正論点

(1)指定商品・指定役務制の廃止  
【 関係する取引 ・・・ 訪問販売・通信販売・電話勧誘販売 】
・訪問販売・通信販売・電話勧誘販売についての指定商品・指定役務制が廃止された
・指定権利制は維持
・規制の対象としてふさわしくない取引について、ネガティブリストの創設
・3000円未満の取引を除き、適用除外規定は割賦販売法の規定と一致された

(2)訪問販売における再勧誘の禁止  
【 関係する取引 ・・・ 訪問販売 】
・電話勧誘販売における再勧誘禁止規定と同旨
・訪問販売業者は、購入者等に対し勧誘を行う前に、勧誘を受ける意思があるか否かを確認するよう努めなければならないこととされた
・契約の締結を拒否した購入者等に対しては、再勧誘が禁止された
・不意打ち性による訪問販売被害の未然防止を目的とする

(3)過量販売解除権の創設 
【 関係する取引 ・・・ 訪問販売 】
・訪問販売の方法により締結された、日常生活に通常必要とされる分量を著しく超える売買契約等を、購入者から解除できる規定の創設
・清算ルールについてはクーリング・オフの規定を準用し、購入者等の保護を強化
・社会問題化した次々販売被害へ対応
・“過量”の判断については、日本訪問販売協会がホワイトリストを公表
・割賦販売法では、クレジット契約に関する過量販売解除権も創設された

(4)広告メールのオプトイン規制  
【 関係する取引 ・・・ 通信販売・連鎖販売取引・業務提供誘引販売 】
・オプトアウト規制(受信を拒否した者への再送信禁止)導入後も増え続ける迷惑メールへの抜本的対策として、オプトイン規制(予め受信の承諾をしていない者への送信禁止)を導入
・電子メールだけでなく、携帯電話によるショートメール(SMS)も規制の対象とされた
・経済産業省からは、ガイドラインも示される
・違反した販売業者等に対する罰則も強化された

(5)返品ルールの創設  
【 関係する取引 ・・・ 通信販売 】
・通信販売の広告には、売買契約の解除に関する事項を表示しなければならないこととされた
・ガイドラインにより、具体的な表示方法も示される
・表示義務違反の場合、購入者は商品到着から8日間に限り、売買契約を無条件で解除できるものとされた
・返品送料は購入者負担

(6)日本訪問販売協会による自主規制の強化 
【 関係する取引 ・・・ 訪問販売 】
・協会の定款には、特定商取引法に違反した会員に対する処分規定を備えることとされ、協会による業界内の自浄作用が期待される
・消費者被害補償基金制度が創設され、協会による消費者保護活動がより強化された

(7)行政権限の拡充・強化
【 関係する取引 ・・・ すべての特定商取引 】
・販売業者等に対し、主務大臣による報告徴収命令及び立入検査が可能となった
・特に必要があると認められる場合には、密接関係者も命令・検査の対象に加えられた

2 割賦販売法の改正論点

(1)割賦要件・適用除外規定の整備  
【 関係する取引 ・・・ 個別信用購入あっせん・包括信用購入あっせん 】
・割賦購入あっせんは、信用購入あっせんに変更された
・個別信用購入あっせんにつき、特定商取引法と同様に指定商品・指定役務制が廃止された
・個別信用購入あっせん・包括信用購入あっせん共に、従来の「3回以上」の制限が撤廃された
・同じく「2か月以上」は「2か月を超えない」に変更され、「2か月後の一括払い」は割賦販売法の適用対象となる

(2)過剰与信防止義務と指定信用情報機関の創設  
【 関係する取引 ・・・ 個別信用購入あっせん・包括信用購入あっせん 】
・クレジット業者に対し、購入者等の支払可能見込額の調査義務が課された
・支払可能見込額を超える与信は、原則として禁止される
・過剰与信防止義務は従来の努力義務から法的義務へと強化され、義務に違反したクレジット業者は、行政処分の対象とされた
・過剰与信防止義務の実効性を担保するため、指定信用情報機関が創設された
・指定信用情報機関には、加盟業者が有する購入者等の情報が全件登録されることとなり、クレジット業者は支払可能見込額の調査に際し、指定信用情報機関を利用しなければならないものとされた

(3)適正与信義務・書面交付義務  
【 関係する取引 ・・・ 個別信用購入あっせん+特定商取引法5類型 】
・個別信用購入あっせん業者は、特定商取引法5類型に該当する契約についてクレジット契約を締結する場合、契約締結に先立って
@)特定商取引法に規定される禁止行為
A)消費者契約法に規定される取消事由に該当する行為
が販売業者等にあるか否かを調査し、かつその記録を作成・保存しなければならないものとされた
・個別信用購入あっせん業者は、特定商取引法5類型に該当する契約についてクレジット契約を締結する場合、購入者に対し、申込時書面と契約時書面の交付が義務付けられた
・従来の個品割賦購入あっせんが悪質業者を助長していたとの指摘を受け、個別信用購入あっせん業者を通じた加盟店のコンプライアンス強化が期待される

(4)クレジット契約に関する民事効の創設  
@ クレジット契約のクーリング・オフ  
【 関係する取引 ・・・ 個別信用購入あっせん+特定商取引法5類型 】
A 不実告知・事実不告知によるクレジット契約の取消し  
【 関係する取引 ・・・ 個別信用購入あっせん+特定商取引法5類型 】
B 過量販売によるクレジット契約の解除  
【 関係する取引 ・・・ 個別信用購入あっせん+訪問販売 】
・販売業者等が倒産した場合等でも、購入者等はクレジット契約を解除しまたは取り消して、クレジット業者から既払金の返還を受けられるようになった
・クーリング・オフと過量販売解除は、特定商取引法の規定に対応
・クレジット契約をクーリング・オフした場合、販売契約等も解除されたものとみなされる(クーリング・オフ連動)
・過量販売解除の清算ルールは、特定商取引法と同様にクーリング・オフの規定が準用される(クーリング・オフ連動も同様に準用される)
・不実告知等による取消権は、(3)の適正与信義務に対応
・困惑型の取消事由が存在する場合は、消費者契約法5条の法理による解決が可能

(5)業務運営に関する措置(業務適正化義務)  
【 関係する取引 ・・・ 個別信用購入あっせん・包括信用購入あっせん 】
・購入者等の利益を保護するため、クレジット業者は、割賦販売法が定める事項について業務運営に関する措置を講じなければならないものとされた

(6)個別信用購入あっせん業者の登録  
【 関係する取引 ・・・ 個別信用購入あっせん 】
・個別信用購入あっせん業者に、登録制度が導入された
・監督官庁の指導の下、悪質加盟店の排除が期待される

(7)認定割賦販売協会の創設  
【 関係する取引 ・・・ すべての割賦販売法対象取引 】
・クレジットの発展と購入者等の保護に関し、業界の自主的取り組みの強化が図られる
・加盟店情報交換制度の活用により、悪質加盟店の排除が期待される



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