一般社団法人の定款案
【理事会非設置一般社団法人/理事複数/代表理事設置】
* 本定款案においては、法人法上の代表理事を「理事長」と称するものとする
(本定款案17条3項参照)
一般社団法人○○○○ 定款
第1章 総 則
(名称)
第1条 |
当法人は,一般社団法人○○○○と称する。 |
・必要的記載事項(法11条1項2号)
・一般社団法人は、その名称中に「一般社団法人」という文字を用いなければならない(法5条)
・誤認させる名称等の使用禁止(法6条)
(事務所)
第2条 |
当法人は,主たる事務所を静岡県浜松市に置く。 |
・必要的記載事項(法11条1項3号)
・定款に所在場所まで記載することもできる(民商第2351号第2部第1−1−(7))
・「従たる事務所の所在地」については必要的記載事項ではないが、定款に記載することもできる
第2章 目的及び事業
(目的)
第3条 |
当法人は,○○○に関する事業を行ない,○○○に寄与することを目的とする。 |
(事業)
第4条 |
当法人は,前条の目的を達成するため,次の事業を行なう。 |
・必要的記載事項(法11条1項1号)
・法人は、法令の規定に従い、定款に定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う(民法34条)ので、事業内容を具体的に記載する必要がある
・なお、一般社団法人の行う事業に制限はなく、公益的な事業、共益的な事業、収益事業など、強行法規・公序良俗に反しない適法な事業であれば、あらゆる事業を「目的」として掲げることができる(『一問一答公益法人関連三法』29頁)
第3章 社 員
(法人の構成員)
第5条 |
当法人は,当法人の事業に賛同する個人又は団体であって,次条の規定により当法人の社員となった者をもって構成する。 |
・1人法人は不可(法10条1項「共同して」)
・法人の名称とは異なる通称名や略称を定款に使用する場合(例えば「社員」を「会員」と表記するような場合)には、「法律上の名称」と定款で使用する名称がどのような関係にあるかを、定款上、明確にする必要がある(平成20年10月10日付け内閣府公益認定等委員会「移行認定又は移行認可の申請に当たって定款の変更の案を作成するに際し特に留意すべき事項について」U2)
・法人の実情に応じて、社員以外の構成員として、名誉会員、特別会員、賛助会員等に関する規定を置くことも可
〔記載例〕
第5条 当法人に次の会員を置く。
(1)正会員 当法人の事業に賛同して入会した個人又は団体
(2)特別会員 ・・・・
(3)賛助会員 ・・・・
2 前項の会員のうち,正会員をもって一般社団法人及び一般財団法人に関する法律上の社員とする。
(社員の資格の取得)
第6条 |
当法人の社員になろうとする者は,当法人が別に定めるところにより申込みをし,その承認を受けなければならない。 |
・必要的記載事項(法11条1項5号)
・必要に応じて、社員入社規定等の規定類や入社申込書等の書式を別に準備しておく
・「別に定める」の例として、「設立時社員の推薦を得た上で」との規定を設ける等が考えられる
(経費の負担)
第7条 |
当法人の事業活動に経常的に生じる費用に充てるため,社員になった時及び毎年○月末日までに,社員は,社員総会において別に定める額を支払う義務を負う。 |
・経費の支払い義務(法27条)
・支払方法は、定款で定める方法による(法27条)
・一般的には「会費」と称される
(任意退社)
第8条 |
社員は,当法人が別に定める退社届を提出することにより,いつでも退社することができる。 |
・必要的記載事項(法11条1項5号)
・任意退社事由(法28条)
・定款で別段の定めをすることも可(法28条但書)
本定款案では「当法人が別に定める退社届を提出することにより」の部分がこれに該当する
(除名)
第9条 |
社員の除名は,正当な事由があるときに限り,社員総会の決議によってすることができる。 |
・必要的記載事項(法11条1項5号)
・特別決議を要する(法30条,法49条2項1号),【注】本定款案15条
(社員資格の喪失)
第10条 |
前2条の場合のほか,社員は,次のいずれかに該当するに至ったときは,その資格を喪失する。 |
・必要的記載事項(法11条1項5号)
・法定退社事由(法29条)
第4章 社 員 総 会
(権限)
第11条 |
社員総会は,法律の規定する事項,その他当法人に関する一切の事項について決議することができる。 |
・総会決議事項(法35条)
・剰余金を分配する旨の決議(同3項)、法人法の規定により社員総会の決議を必要とする事項について、社員総会以外の機関が決定することができる旨の定款の定めは効力を有しない(同4項)
・会員を種類分けする際には、注意的に、総会の構成員を明記するのがよい
〔記載例〕
第11条 社員総会は,この定款第5条に定める正社員をもって構成する。
(招集)
第12条 |
当法人の定時社員総会は,毎事業年度終了後2ヶ月以内に招集し,臨時社員総会は,必要がある場合に招集する。 |
・招集(法36条1項、2項,法37条)
・社員による招集請求権の要件を、定款で5分の1以下の割合と定めることもできる(法37条1項)
・招集通知は、総会の日の1週間前までに発送,理事会非設置一般社団法人においては定款の定めにより期間の短縮可能。なお、書面表決(法38条1項3号)・電子表決(同4号)を採用する場合は2週間前までに発送を要す(法39条1項)
・理事会非設置一般社団法人については、必ずしも、書面による通知を要しない(法39条2項2号)
・社員全員の同意がある場合、招集手続の省略が可能(法40条)
・定時総会の開催時期と申告書の提出時期(法人税法74条,各事業年度終了の日の翌日から2月以内)
(議長)
第13条 |
社員総会の議長は,理事長がこれに当たる。 |
・議長は、社員総会の秩序を維持し、議事を整理する(法54条)
(議決権)
第14条 |
社員総会における議決権は,社員1名につき1個とする。 |
・議決権の数(法48条)
・定款で別段の定めができるが、社員総会において決議する事項の全部につき社員が議決権を行使できない旨の定めは効力を有しない(同2項)
・別段の定めの例・・・社員Aについては2個、社員Bについては1個
社員Aは、役員の選任決議について議決権を行使することができない
(以上、登記情報565号34頁)
・そのほかにも、法人の活動に対する貢献度に応じて議決権を付与する、会費などの経済的な負担に応じて議決権を付与する等が考えられる
(決議)
第15条 |
社員総会の決議は,総社員の議決権の過半数を有する社員が出席し,出席した当該社員の議決権の過半数をもって行う。 |
・総会の決議事項(法49条)
・普通決議につき、定足数の緩和又は撤廃が可能(同1項)。決議要件は加重のみ可能(『一問一答公益法人関連三法』47頁)
・特別決議の決議要件につき、定款で総社員の議決権の3分の2を上回る割合(加重のみ可)の定めも可(同2項)
(議事録)
第16条 |
社員総会の議事については,法令の定めるところにより議事録を作成し,議長及び議事録の作成に係る職務を行った理事がこれに署名若しくは記名押印又は電子署名をし,10年間主たる事務所に備え置く。 |
・議事録の作成(法57条)
・記載事項(規則11条)
・会社法の株主総会議事録同様、法律上は、署名義務に関する規定なし,本定款案では、議長及び議事録の作成に係る職務を行った理事(規則11条3項4号参照)を署名義務者として定める
第5章 役 員
(役員の設置)
第17条 |
当法人に,次の役員を置く。 |
・監事設置による法律上の差異
理事の報告義務(法85条)・・・報告先が「社員」から「監事」に修正
社員による理事の行為の差止め(法88条)
・・・要件を「著しい損害」から「回復することが出来ない損害」に厳格化
役員等の責任の一部免除(法113条3項)
・・・法111条1項による理事の責任の免除に関する議案を社員総会に提出する場合に、監事の同意を得なければならない
理事等による免除に関する定款の定め(法114条1項)
・・・理事が2名以上ある場合には、法111条1項の責任について、最低責任限度額を限度として、理事の過半数の同意によって免除することができる旨の定款の定めを置くことができる
2 |
理事のうち1名を理事長とする。 |
・理事は最低1名必要(法60条1項)
・監事設置の旨の規定は、相対的記載事項(法60条2項)
・役員の定数は「○名以上○名以下」等の定め方も可
・理事会非設置一般社団法人においては、理事は原則代表権を有する(法77条)。第2項以下は代表理事を定める場合
・法人法の名称とは異なる通称名や略称を定款に使用する場合には、「法律上の名称」と定款で使用する名称がどのような関係にあるかを、定款上、明確にする必要がある(平成20年10月10日付け内閣府公益認定等委員会「移行認定又は移行認可の申請に当たって定款の変更の案を作成するに際し特に留意すべき事項について」U2)
(役員の選任)
第18条 |
理事(及び監事)は,社員総会の決議によって選任する。 |
・役員の選任(法63条)
・法人法では、理事及び監事を総称して「役員」(同条1項)
2 |
理事長は,理事の互選によって理事の中から選定する。 |
・理事会非設置一般社団法人においては、定款に互選規定を定める他、定款、社員総会の決議によって代表理事を選定することができる(法77条3項)
・代表理事を社員総会で選定することとした場合、社員総会議事録の署名義務者の規定(本定款案16条参照)にかかわらず、商業登記規則61条4項1号により、議長及び出席理事全員の印鑑証明書の提供を要する(登記情報565号37頁)
・理事と代表理事の地位が分化される互選規定により選任された代表理事に限り、欠員が生じた場合に権利義務を承継する(法79条参照)
(理事の職務及び権限)
第19条 |
理事は,法令及びこの定款で定めるところにより,職務を執行する。 |
・理事が2人以上ある場合、一般社団法人の業務は定款に別段の定めがある場合を除き、理事の過半数をもって決定する(法76条2項)
≪*監事設置一般社団法人の場合≫
(監事の職務及び権限)
第○条 |
監事は,理事の職務の執行を監査し,法令で定めるところにより,監査報告を作成する。 |
・監事の権限(法99条1項、2項)
・子法人が存在する場合(法99条3項、4項)
・法令で定める監事の職務
理事への報告義務(法100条)
社員総会への報告義務(法102条)
理事の行為の差止め(法103条)
・監査報告の作成(規則16条)
(役員の任期)
第20条 |
理事の任期は,選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとする。 |
・定款又は社員総会の決議により任期の短縮が可能(法66条)
・法人法改正の経緯(天下りの防止等)から、任期の伸長規定を設けることに対し、パブリックコメントにおいて反対意見が圧倒的多数であったことから、任期伸長は不可とされた
≪*監事設置一般社団法人の場合≫
○ |
監事の任期は,選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとする。 |
・定款の定めにより「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会終結の時」を限度として任期の短縮が可能(法67条1項)
・社員総会の決議によることは不可(理事…「定款又は社員総会の決議により」(法66条))
2 |
補欠として選任された理事(及び監事)の任期は,前任者の任期の満了する時までとする。 |
・理事につき(法66条)
・監事につき(法67条2項)
・権利義務に関する規定(法75条1項、法79条)
・社員総会で役員選任決議をする際には、下記のとおり「補欠役員」の選任決議を併せて行うことができる(法63条2項、規則12条)
補欠役員選任決議において決議すべき事項(規則12条2項)
ア・当該候補者につき
@ 補欠の役員である旨
A 補欠の外部理事(法113条1項2号ロ)又は外部監事(法115条1項)として選任する場合には、その旨
B 特定の役員の補欠の役員として選任するときは、その旨及び当該特定の役員の氏名
イ・同一の役員について、複数の補欠の役員を選任した場合には、当該補欠の役員同士の相互間の優先順位
ウ・補欠の役員について、就任前に選任の取消しを行う場合があるときは、その旨及び取消しのための手続。
・補欠役員選任決議が効力を有するのは、原則として当該決議後最初に開催する定時社員総会の開始の時まで。ただし、定款で別段の定めが可能。さらに、社員総会の決議によって期間を短縮することができる(規則12条3項)
3 |
増員により選任された理事(及び監事)の任期については,他の理事(及び監事)の任期の満了する時までとする。(ただし,増員により選任された監事の任期については,他の監事の残任期間が2年に足らないときは,第○項によるものとする。) |
(役員の解任)
第21条 |
理事(及び監事)は,社員総会の決議によって解任することができる。 |
・解任決議(法70条1項)
・理事解任は、普通決議(法49条1項)
・監事解任は、特別決議(法49条2項),【注】本定款15条
(報酬等)
第22条 |
【A案】 理事に対する報酬等は,社員総会において定める総額の範囲内で支給することができる。理事が複数ある場合の各理事の報酬等の額は,社員総会の定める総額の範囲内において各理事の協議により決定する。 |
・無報酬では経済的余裕がある者しか参加できず、あるいは業務に専念してもらえなくなることから、職務執行の対価として、その責任に見合った報酬を支払うべきとする考え方による
第22条 |
【B案】 理事は,無報酬とする。ただし,常勤の理事に対しては,社員総会において定める総額の範囲内で支給することができる。理事が複数ある場合の各理事の報酬等の額は,社員総会の定める総額の範囲内において各理事の協議により決定する。 |
・非営利であり、かつ、小規模な一般社団法人を想定した場合、原則無報酬の定めであってもいいのではないか(私見)
・公益法人の場合、非営利・公益法人である以上、自主的に無償で社会貢献するものであり、原則的には無報酬であるとする考え方が強い
・理事の報酬等は、定款又は社員総会の決議によって定める(法89条)。もっとも、定款又は社員総会の決議においては、報酬等の総額を定めることで足り、理事が複数ある場合の各理事の報酬額は、その総額の範囲内において理事の協議で定めることができる(『一問一答公益法人関連人三法』68頁)
≪*監事設置一般社団法人の場合≫
○ |
監事に対する報酬等は,社員総会において定める総額の範囲内で,支給することができる。 |
・監事の報酬(法105条)
第6章 資産及び会計
(事業年度)
第23条 |
当法人の事業年度は,毎年4月1日から翌年3月31日までの年1期とする。 |
・必要的記載事項(法11条1項7号)
・事業年度は1年を超えることができない
事業年度の末日を変更する場合における変更後の最初の事業年度については、1年6ヶ月を超えることができない(規則29条1項)
(事業報告及び決算)
第24条 |
当法人の事業報告及び決算については,毎事業年度終了後,理事長が次の書面または電磁的記録を作成して定時社員総会に提出または提供し,第1号及び第2号についてはその内容を報告し,第3号乃至第5号については承認を受けなければならない。 |
・作成義務(法123条2項)
・定時社員総会への提出・提供(法126条1項4号)、承認事項(同2項)、報告事項(同3項)
2 |
前項の書面または電磁的記録は,主たる事務所に5年間備え置くものとする。 |
・計算書類等の備置義務(法129条1項)
・計算書類及びその附属明細書は、通算10年間の保存義務あり(法123条4項)
第7章 定款の変更及び解散
(定款の変更)
第25条 |
この定款は,社員総会の決議によって変更することができる。 |
・特別決議を要す(法146条,法49条2項),【注】本定款案15条
(解散)
第26条 |
当法人は,社員総会の決議その他法令で定められた事由により解散する。 |
・解散事由(法148条)
第8章 公告の方法
(公告の方法)
第27条 |
当法人の公告方法は,官報に掲載する方法とする。 |
・公告方法(法331条1項1号)
・必要的記載事項(法11条1項6号)
・その他の方法の場合
〔記載例〕
当法人の公告方法は,静岡市に於いて発行される静岡新聞に掲載する方法とする
(法331条1項2号)
当法人の公告方法は,電子公告の方法とする。
事故その他やむを得ない事由によって電子公告による公告をすることができない場合の公告方法は,官報に掲載する方法とする。
(法331条1項3号、同条2項)
当法人の公告方法は,主たる事務所の公衆の見やすい場所に掲示する方法とする。
(法331条1項4号)
・4号の公告方法は、債権者保護手続の際の公告方法としては不可(法322条2号、法323条6号)
第9章 附 則
(最初の事業年度)
第28条 |
当法人の最初の事業年度は,当法人成立の日から平成○年3月31日までとする。 |
・設立登記によって成立(法22条)
(設立時役員)
第29条 |
当法人の設立時理事(及び設立時代表理事)は,次のとおりとする。 |
・設立時役員の選任(法15条)
・設立時代表理事は、定款で定めることができる(登記情報565号35頁,理事会設置一般社団法人の場合、法21条1項、3項)
(設立時社員の氏名及び住所)
第30条 |
当法人の設立時社員の氏名及び住所は,次のとおりである。 |
・必要的記載事項(法11条1項4号)
・1人法人は不可(法10条1項「共同して」)
(法令の準拠)
第31条 |
この定款に規定のない事項は,すべて一般社団法人及び一般財団法人に関する法律その他の法令に従う。 |
定款作成上の注意
・設立時社員が共同して定款を作成し、その全員が署名又は記名押印しなければならない(法10条1項)
・電磁的記録により作成し、電子署名を行う方法も可(法10条2項)
・公証人の認証を受ける必要あり(法13条)
・定款の備置義務等(法14条)